読書感想文『ローマの休日』

読書感想文

ローマ。なんといってもローマです

『ローマの休日』より アン女王

見たことある人もない人も、一度は耳にしたことのあるタイトル『ローマの休日』
僕も気になったので見てみました。

とても素敵な作品でした。映画っていうのはこうでなくちゃ。ラブロマンスというジャンルの最も面白いところを詰め合わせたような作品だと思います。

あらすじ

ヨーロッパのとても偉い女王であるアン女王は親善旅行でヨーロッパ各国を巡る。
多忙なスケジュール・公務に追われる窮屈な生活に嫌気がさしてしまいます。

ついに不満が爆発、ヒステリー気味になってしまいます。これは良くないと鎮静剤を処方されてしまいます。
屋外で行われるパーティーを羨ましそうに眺めるアン女王。ついに寝室を抜け出してローマの夜街へ。

脱出することには成功するものの、鎮静剤の効果でベンチに寝込んでしまいます。

そんなアン女王を女王とも知らず。かくまったのが新聞記者のジョー・ブラドリー。
ブラドリーとアン女王は互いの素性を隠したささやかな休日をローマで送ることになるのです・・・

感想

ラブロマンスが主題ではあると思いますが、コメディの色も強く、明るく、軽快にストーリーが展開されていきます。それはまるでスラスラと読める小説みたいに。一挙手一投足から感じられる明るく、面白いテンポが見る側にリズムを与えてくれます。

本作のストーリーを簡単に表すなら「逆シンデレラ」
王女が庶民の生活に溶け込みます。それゆえに愉快な展開も多々。アン女王が初めてブラドリーの部屋を見たとき

「ここはエレベーター?」なんて言ってしまいます。

ちなみに本作はアン女王を演じるオードリー・ヘプバーンのデビュー作としても有名ですね。
ちなみに僕は俳優事情には超疎いので、初めてオードリー・ヘプバーンという女優を認識しました。

演技が下手とか、別にそういった印象は受けませんでした。もしかしたら棒読みだったりするのかもしれませんが、僕は英語のアクセントはわからないのでセーフです。寧ろ、女王役なので肩に少し力が入ってるくらいが役的にはハマるんだと思います。

僕は「魔法の時間」なんて言葉はあまり好まないのですが。今作ばかりは魔法の時間という言葉がぴったりだと思いました。

ローマの街で魔法の時間を楽しむ2人と、一緒に魔法の時間に酔いしれる。

それこそが映画の持つ一種の社会的役割であると思いましたし、その魔法の最奥を表したからこそ、ローマの休日は不朽なのだと思います。

スクーターで走り出してしまうアン女王、真実の口で驚くアン女王、秘密警察と一悶着起こすアン女王。どれもつい、にやけながら見てしまいます。

美しい女王と愛嬌のある女性を演じるヘプバーンの演技は必見です。

しかし、夢は醒めるもの。魔法は解けるもの。いつか終わりが訪れるのです。
魔法の時間の終わりが、この映画の終わりを感じさせてくれます。

ままならぬのが人生だ

『ローマの休日』より ジョー・ブラドリー

魔法が終わり、身分を隠した2人は元の場所へ帰らなければなりません。

ラストは本当にうまく終わっていると思います

この作品はここで終わるんだろうな、でもまだ終わってほしくない。けれどもこの作品はここで終わらないといけない。

悲しいけど、どこか腑に落ちる。いい夢を見た後、もう一度寝て、夢の続きを見ようとしたことはありませんか?それに近い感情を抱かせてくれます。

もしこれを映画館で見ていたら。僕は近くの喫茶店でコーヒーとケーキを頼んで、コーヒーを飲みながら夢の余韻に浸ると思います。そんな、漠然とした夢心地と寂しさを与えてくれます。

1時間58分という尺。予算の都合で白黒になった。ローマの街並み。作られた時代。

これらの全てがパズルのピースとして上手く嵌る事によって『ローマの休日』なんだと、強く実感させられました。

ストーリーの辻褄もよくあっていて、「そんな都合よくいくかよ」って、しらけた気持ちはどうしても生まれてしまいがちですが、それでも「こんな時間が過ごせたら素敵だろうな」って気持ちにさせてくれます。

夢を見るということ

たった1日、ささやかな魔法の時間があったとすれば。
私たちはその魔法の時間を、輝く一番星のように、胸に大事にしまいこんで、これから先も続く何十年もの人生を生き抜くことができるかもしれない。

ローマの休日がなぜ大ブームを生んだのか。その答えはこれなのかなって思います。
叶うかどうか誰にもわからない、叶わずにそのまま死ぬかもしれない。それでも、生きていればそんな瞬間が、私にもあるかもしれない

そんな曖昧な「夢」を追いかけて、今日も世界のいろんなところでいろんな人が生活を営んでいるんだと思うと、とても素敵な気持ちになりませんか?

最後に

エディ・アルバート演じるカメラマン役。アーヴィング・ラドヴィッチという男がいるのですが、彼が実にいい奴でして。いかにも男くさい、脇役っぽい、めちゃくちゃいいキャラしてました。

ぜひ、アーヴィングのセリフにも注目してみてくださいね。

いい映画、いい歌、いい本に出会うといい気分になるというものです。歴史を超えて語り継がれる名作は、名作である可能性がとても高いということを実感しました。

頭で考えたら「当たり前やん」となるのですが、頭で理解することと、心で理解することは違います。

頭で理解して「歴史を超えて語り継がれる作品は名作だよ」というのと、心で理解して同じことを言うのでは、言葉にこもる魂が違うということです。

皆さんにも、ぜひ「魔法の時間」を味わっていただきたいなあと思う次第です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました